2012年関東大会講評、感想
審査員講評:

1)雨森 文也 氏

課題曲
音楽は良く流れているのですが、やや拍節的です。
ルネサンス後期の通模倣様式の作品は、各パートがもっと自由に
グレゴリオ聖歌的なしなやかな自由なゆれを持って歌われ
結果として遠近感のある立体的響き、美しいハーモニーが鳴ってほしい作品です。
この時代の作品のスタイルについて、さらに勉強されてはいかがでしょうか。

自由曲
宗教曲は「初めに言葉ありき」だと思います。
まず、もっとテキストの内容をしっかり把握して、そこにどんなドラマがあるのか、
おひとりおひとりが考える……それが表現の出発点だと思います。
頑張って下さい。

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2)今井 邦男 氏

Palestrina
よい音色をもってらっしゃるので、更に各パートを整えて下さい。
あちこちのフレーズの入りも乱暴になったり不揃いになったりしないように
お願いします。

Ave Maria
Altの詠唱をもっときざまないでお願いします。
美しいChorusが生まれましたが、Endingを工夫して下さい。

Cantate Domino
立派な演奏でした。
よろこびのChorusですから、徹底して動かしてください。

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3)澤島 富雄 氏

各パート美しい声と、しっかりした歌唱法のすばらしい合唱です。
これだけ立派なのだから、もっとのびのび(下線強調)歌いましょう!
更に、すばらしくなる!

指揮
細部にわたっての音楽表現力すばらしい!

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4)清水 敬一 氏

課題曲)良い流れと明るい音色で、爽やかな仕上がりでした。

自由曲)作品の性格はきちんと伝わって来ました。
    2曲ともさらに音そのものを磨いて下さい。

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5)本山 秀毅 氏

もっている声を全て用いるのではなく、バランスのよいひびきや声づくりを
目指してほしい。音のふくらみや流れの点でもう少し工夫が可能だと思う。
声のクオリティを上げるように(ひびきが相殺されないように)
全体にピッチが下がり気味。
和声感をしっかり身につけて、ハーモニーを作って下さい。
ラストに向かって調子がでてきて、おつりは充実した音がきかれた。


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審査員講評 総評メモ(本山 秀毅 氏)
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・みなさん演奏して疲れたところはどこですか 喉ですか?
・いい声といい合唱というものについて
 いい声(声楽科など)だからと言っていい合唱になるとは限らない。
 重すぎで声が立派過ぎて揃わないのでは意味がない。
 合唱をする人は、いいアンサンブルができる声、合唱に求められる声を
 作るべきでしょう。

・(合唱としていい声の例として)明るく響く声が良い
 (「名前を出して恐縮ですが」と断りを入れて、小田原少年少女を褒めていた)

・声は耳で作るもの
 耳の使い方のいい団体とそうでない団体で大きく(演奏の質が)分かれた。
 耳を良く使って、演奏に反映しているかどうか考えて下さい

・今回39団体中18団体がG1を演奏したが、最初の音(ソプラノ)がきれいに
 決まった団体は1〜2団体しかなく、その団体は演奏が素晴らしかった。
 この曲はなかなか難しい曲です

・(自由曲として)いい作品、音楽的に実りのある作品を選んで下さい。
 (コンクール向けだから、という曲を歌うのではなく、合唱団として実り のある
 選曲をすべき、という意味)

・(審査員の中からの意見として)詰めが甘い演奏が多くあった。
 聞きあって、それを反映できるような練習をしてください。

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指揮者感想:

課題曲 (2’50”)

・全体的な流れ、ブロックごとのフレーズの性格付けについてはかなり良くできて
 いると思う。
 ラストの「死ぬことはないだろう」という言葉と、それに伴う喜びの響きをもう少し
 表現したかった。下三声のラスト二小節の充実要。
・ソプラノの音色が揃わなかった部分があった。
 Ego、Hic、Non morietur など、すべて同じ音(Es)で、練習ではよくなっていた
 だけに残念。成功確率を100%に近く上げたい。
 →エとオの母音をそろえる。
・アルトが目立たなければならない部分が音量的に物足りない。
・ラストで速度を落とす時、ベースがカクカクしてしまうのを直したい。
・第2ブロックの中間くらいから時々フレーズ処理が走ってしまい、パート間の
 連携が崩れてしまった。
 県大会でも第3ブロックくらいから崩れてしまったので、特に注意して直して
 いきたい。

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Ave Maria III (3’28” →演奏正味 3’16”)

・お祈り部隊は今回も健闘。ただし音程的にもう少しハモりたい。
 Cの人が下がって行くように聞こえる。CとBのバランスを再考。
・ソプラノ、テノールの出だしは柔らかくて良かった。
 ソプラノ「Gratia」の出がやはり少々不安。
 ベースが入ってからの「Dominus〜」の盛り上がりをもっと出したい。
・「Benedicta〜」mpからということはできていたが、息もれが多かった。
 音をクリアに歌いたい。
 ソプラノが二つに分かれるところは県大会よりかなり良くなった
・ソロは上手かった(表現の滑らかさが)
・最終ブロックの表現はとてもよかった。音をもっと整えたい。
 アルトの下(Cの音)をもう少し充実させたい。
 ソプラノ、テノールは入りと音程はそろってきた。テノールの音色をもう少し
 揃えたい。
・最後のページは音量的なもの、精神的なもの、両方ともやりたいことを表現
 できてきていると思う。
 グリッサンドは、もう少し下りてくる過程を見せたい。

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Cantate Domino (3’29” →演奏正味3’05”)

・やりたいことは三曲中で一番つたわったのではないかと思う。
・男声三部合唱の音、かなり改善したが、もっとブラッシュアップしたい。
 馬鹿アゴが徹底できてないところがいくつかあった。
・Cantate アルトの出だしが少々ばらける。
 力強さと音程を両立させたい。練習では何度かできていたので、こちらも確率を
 上げていく方向に。
・中間部、男声と女声がぶつかったまま伸ばす音をもう少し聞かせたい。
・再現部(ラスト)F-durに転調する時にもうちょっと音をクリアに。
 音量的にも盛り上がりをもう少しだけ出したい。
・最後はとてもよかった。全国大会もこの方向で良い響きを!

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(2012年10月16日Chorus-MLより)

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