2010年神奈川県大会講評、感想
審査員講評:
1)有村祐輔 氏
  Ne timeas
    よいTempoとフレージングで歌われています。冒頭の4度の音型はもっと
    はっきりと動いた方がよいのでは?

  Miserere mei
    Miserere meiはもっとlegatoな唱法ができたらよいですね。

  Ubi caritas
    8分音符のシラビックな音の動きでは、textの発音処理がとても大切です。
    全体によく歌われています。
    最後の和音は2度の音の処理をもっと研究すると、もっとよい響きになる
    のでは?


2)江上孝則 氏
  Sopの中で音程をそろえましょう。
  Altissimi miserere ibi  縦のイで口をもう少し開けてみてはいかが
  でしょうか。

  Ubi caritas 胸が温かくなってきました。


3)片山みゆき 氏
  シード出場おめでとうございます。

  あえて何か申し上げるとしましたら……。
  課題曲の歌い始めの女声が、少し安定せず、声がふるえてしかったのが
  気になりました。特にSopの方は、心細いことと拝察しますが、
  Ne timeas,Mariaまで心にしっかり留め、目標点に向かって歌い始められては?
  と思いました。


4)長谷川久恵 氏
  ルネサンスポリフォニーはなるべくビブラートを取りましょう。
  各声部のフレーズラインがもっとくっきりと浮かぶようにして下さい。
  透明な響きを求めたいですね。

  対して自由曲のホモフォニックな和声はもっと確実に。

  meditativo sempreなので、静寂な様相がもっとほしい(fでも)。
  もっともっと透明感です。


5)古橋富士雄 氏
  課題曲
    Sopが伸ばしている音がゆらぐ事があります。気をつけましょう!

  自由曲
    1曲と2曲目で入れ替えはしない方が良いです。
    その場で歌っても客席では変わりません。
    この位歌えるみなさんですから、となりがちがうパートが居ても問題
    ないと思います。
    素敵な余韻の中で次の曲に入りたい。うごく事で音楽が途切れます。


指揮者感想:

いままでの県大会の中で、一番、「こういう音楽がやりたい」ということを前面に出せた
演奏であったと思う。
課題曲(ルネサンス)と自由曲(現代曲)の雰囲気の違いなどもよく出ていた。
並び方を変えて演奏したのはコンクールでは初めてだが、効果的であった。

これからの課題は、何をおいてもクリアな音程である(特に自由曲)と考えており
その実現を目指して練習を行っていきたいと思っている。

課題曲:
出だしの「Ne」における「エ」の音色をもっとそろえたい。
講評にも書かれているが、最初のフレーズ「Ne timeas,Maria」までを、ひとつの大きな
流れとして、次々にテーマを提示していくような演奏にしなければならない。
そういった部分がいまひとつであったことが残念。
全体的に明るいトーンで演奏できたことはよかった。母音のいろをもう少し統一したい。


自由曲
Miserere mei:
音程の不安定さが露呈してしまって非常に残念だった。
出だし、有声子音から歌いつないでいく、という意識は共有出来始めているが、
ぶつかり合う音程が不安定で萎縮しがちな演奏になってしまった。
中間部のフォルテは、この方向でよいと考えている。パートバランスを再考したい。
最後の「Miserere〜」に関しては音程が命。全員が一部の隙もない音を出さなければ
勝負にならない。

Ubi caritas:
ソプラノのパートソロがとても綺麗に演奏できたことが大きな収穫。
何十回やっても必ずそれができるようにこれからも練習を重ねていきたい。
対してコーラス部分の集中力がもう一つ。歌詞を頭の中で必死で追っている内は
緊密な和音感を出すことは難しい。
パート別、2パートごとなどいろいろな角度から練習を行い、この曲に関しても、
全員が正確な音を出せるようにしていきたい。



Ne timeas,Mariaは、どこまでも喜びにあふれた明るい音楽。
ポリフォニー(各パートが対等にそれぞれの旋律を歌い継ぐ)の美。
乙女マリアへの祝福、途切れることのない賛美といったものが感じられるように。

Miserere meiは、とにかく音程。緊密なモザイクのように和音を組み立てたい。
有声子音をきちんと歌うこと、レガートを心がける。
ぶつかり合う二度の音程が、「罪人としての死へのおそれ」、そして、
「主への回帰を求めるつよい心象」を表現していることを忘れないようにしたい。

Ubi caritasは、透明なソプラノのテーマから内省的な合唱、その繰返しを経て
すべての人が声を合わせてひとつの大きなものを作り上げていく。
講評、会場の感想にもあったが、温かく広く大きな音楽にしていきたいと考えている。

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