2009年神奈川県大会講評、感想
審査員講評:
1)雨森文也 氏
  課題曲:
    この曲は、作曲者がグレゴリオ聖歌のアルシス、テージスのゆれと、日本語の
    一体化をめざして書いた曲です。作曲者自身によるテキスト(歌詞)に対する
    アルシス、テージスを記したものを良く研究なさってください。
    (もちろん、その前にまず音程をもっと正確にする必要があるのは、言うまで
     もありませんが)

  自由曲:
     Hodie−まずグレゴリアンのHodieをもっと体に入れましょう。
         またもっとキリスト生誕の喜びが溢れてくる必要があります。
     Sursum−ルネサンス的な通模倣のスタイルをもっと明確に表現して下さい。
     Laudate−Laudate(らうだ〜て)喜び讃えよです。暗すぎます。

  *ラテン語のテキストに対する思い入れが足らないと思います。
   頑張って下さい。


2)有村祐輔 氏
  風: ・tenutoの記号を大切に
     ・「うしろにおくるは」一つのフレズの方がよいでしょう
     ・最後のallargandoはもっとたっぷり

  Hodie:フレーズの終わりをもっとしぼった方がよいでしょう
  Sursum corda:全体に納得できる演奏です
  Laudate:18小節の低いAltoにはTenorが手伝ってもよいのでは?
        Laudateのスラーは同じシラブルで歌うという意味です。
        余りportamentoはつかない方がよいのでは?


3)清水雅彦 氏
  男声の柔らかい音色、美しい出だし。Sop少し固くなったでしょうか
  (2回目は美しかったです)。
  かぜなーりの跳躍はもう少し会場を見て歌いましょう。
  テヌートの処理(思いの)、piu mossoのTempoの変化など、もう一歩踏み込んで
  変化させたいところです。

  アンサンブルの美しい合唱団。県立音楽堂は良い響きが助けてくれますが、
  もう一歩輝きを、と欲が出ます。

  自由曲も大変美しい仕上がり。皆さんの持ち味が活かされていると思います。
  2曲目になると、上行形のAlsis的な高まり、動きが欲しい、と思ってしまいます。
  これは1曲目でも、グレゴリオの言葉とメロディーの密接な関係を研究して欲しい
  と思って聴いていましたが……。
  3曲目の神への賛美も、あと一歩の輝きを!
  10小節〜の美しさ、Soloの美しさ◎
  Cdurの心からの喜び、高まり(ドミソソ)、このテーマから連なる説得力を!

  今年も、どうぞご活躍下さい。応援と期待を込めて!



4)長谷川冴子 氏
  日本語のディクションに対しての心配りが大変良い事だと思います。
  ソノリティーとしては美しいのですが、Sopの安定、丸さ、そしてAltもあたりを良く。

  Hodieなど宗教曲の時には声質がとても良いのです。邦語の時の
  発声の工夫というか認識を少し(不明)してみてはどうでしょう。

  楽譜に(Courの曲)気づいた事書きました。


  なお、長谷川冴子氏の楽譜への書き込みは下記の通り。

    Hodie:
    ・最初のフレーズ(Sop)全体に「喜び」と書いてあります。
     また、この一段目の最後の「est」 「e」ぼけないであげて とあります。 

    ・8小節目の「est」(Sop)、「四声ではOKです」
  
    ・20小節目、テノール主旋律の「dicentes:〜」と、 
     21小節目、アルトの「in excelsis Deo」にも「喜び」と書かれてあります。

    Sursum:記載なし

    Laudate:
    ・出だしのユニゾンに「丸く」
    ・7小節目〜9小節目の「omnes populi」の繰り返しに、スラーが書かれ
     「拍節にならぬよう、one wordのように」
    ・28小節目、下三声の「in saecula saeculorum」には、「息の流れをもって」と書かれています


5)渡辺三郎 氏
  透明な音色が美しいですね。
  ハーモニーをさらに正確にとって集中力を増して下さい。
  (特に弱声部分で)
  表現もさらに多彩に……!

  (なお、鉛筆書きなので消した跡があるのですが、
  「バスパートが下がりぎみのようです」 と読めました)



指揮者感想:

今年は、自由曲3曲とも、一度演奏会で本番に乗せていたことが大変良かった。
いつもよりは安心して自由曲を歌えたのではないかと思う。
ただし、細かい音程や音色については、まだまだそろっていない感じが強い。
練習不足な部分はもろにそれが出てしまっている。関東大会へ向けて改善していく
ところを絞って、もう少しまとまりのある演奏にしたいと思う。

課題曲:
まだ歌いこなれていない、不安定さがかなり見えてしまっている。
男声四部合唱はもう内声部がもう少し音程を安定させないと、ハーモニーにならない。
ソプラノが緊張からかかなり固くなってしまっている。「つぎつぎ」の4パート間の連携不足。
カンマやブレスの前の音符が短くなりすぎて、ぶつ切れに聞こえる部分が何箇所かある。

ただし、全体的に、何かをやりたいという意思が見え始めているように聞こえる。
歌い方は、さわやかで柔らかく、とてもよいのではないか。

自由曲
Hodie Christus natus est:
一番回数を歌っている曲だけあって、安心して聞いていられる。全体的に、静けさは
美しいのだが、もう少し喜びのようなものを表現したい。
テノールとベース、ソプラノとアルトなど二重唱になる部分で、歌詞がバラける。
最後のアレルヤ、もう少し(音程、音色)。

Sursum corda:
出だしベース、健闘した。次はもっと安定して歌いたい。
ソプラノ+三声になってしまう部分が時々ある。和音の密集感をもっと出したい。
後半の入り、テノールが低い。フォルテ部分の男声二重唱の音程を改善したい。
アルトの拍節感が強すぎる。もう少しレガートに。
最後の和音、ソプラノから音をとるように。

Laudate Dominum:
勢いよく歌いだせたことは大変良かった。しかし出だしのユニゾンをもっとそろえたい。
中間部、ソプラノパートソロからテノールソロに対して、和音を付けている低声部の
音程が悪い。
再現部の出だし、それぞれもっと音程をそろえる。またこのあたりから体力が切れた
感じに聞こえる。12分歌い続ける体力を。

-----<ボイストレーナー感想>-----
 ・一曲目は、「指揮者が言ったから、楽譜に書いてあるから」曲想をつけている、と
  いう感じ(主体性のない演奏に聞こえた?)
 ・Hodieが一番良かった。この曲になってから、急に、合唱団全体が歌詞の内容を
  理解して歌っている感じになった。
 ・その他、女声の発声について細かく話があったが、ここでは割愛する(個人レッス
  ンの内容であるため)

団員感想:
9月9日(水)の練習で演奏CDを試聴し、パート内で話し合ってもらいました。
各パートでまとめてもらったものを下記に掲載します。


Soprano:
【風】
・初めの1ページくらいは音程などが不安定だったが、その後は上手くいっていた。
・懸念していた「つぎつぎに」は1回目は失敗してしまった。
 (音程が高い人と低い人がいる)
・自分のパートから始まる時は緊張して上手くいかない。

【Hodie Christus natsu est】
・まだ暗い雰囲気なので、もっと明るく歌うべき。

【Sursum Corda】
・ソプラノソロの部分が機械的に聴こえるので、もう少し感情込めて歌うようにする。

【Laudate Dominum】
・全体的に力むと庶民的になってしまう。 (素人っぽくなってしまう)

【全体】
・今回は本番では練習通りの演奏ができた。
 ・思っていたより声が溶けていてよかった。
 ・まだまだなところはあるものの、ミューザの演奏と比べると格段に良くなっている。
 歌いこんできている成果か。
という肯定的な意見もあったが、
 ・出だしの部分がよくない(曲の開始、長い休符の後など)。
 ・長い音符、フレーズに問題がある。語尾がちゃんと聞こえない。
 ・たんたんと歌いすぎ
などの反省も幾つか出された。


Alto:
 良かった点:
  ・6月の演奏会よりは、やりたいことが見える演奏だったと思う。
  注意されたところを意識して歌おう、という姿勢はあったと思う。

 悪かった点:
 <強弱・抑揚>
  ・6月の演奏会より抑揚に気をつけて歌ったつもりだったけれど、
   録音物を聴いてみると、まだまだ足りなかったと実感した。
  ・pがpになっていない。
  ・f(フォルテ)の箇所が、必死な感じでうるさい。
  曲が荒れて聞こえ、曲想にもあわない強さ。
  荘厳で包み込むようなfがほしいのに、なぐるようなfだったりしている。

  <歌い方>
  ・課題曲の歌い方が重い。秋の風の軽やかさを表現できていない。
  ・パートごとに入る箇所で、Alto内で入りがそろっていない。
   ビクビク出てしまう場合があった。
  ・パートごとに順番に出てくるところで、流れに乗って、同じ歌い方が
   できなかった。独自な歌い方になってしまった。
  ・伸ばす音が短い(特に課題曲で、四分音符が八分音符になってしまった)
  ・課題曲で、「'」がついた箇所、ブチっと切れすぎな印象。

  <音程>
  ・和音がいまいちハモらない。他パートを聴けていないせいだと思う。
  ・半音進行の音が適当、あいまいになっている。もう一度音を確認したい。

  <発音>
  ・母音の発音がパートや人ごとに違う。(各地方に方言が・・・)
  ・入りや語尾(-m、-s など)が揃わず、バラバラに聞こえた。
  ・日本語として妙なところが強くなっている箇所があった。


Tenor:
  ・Sursum corda まではまとまっていたのに、Laudate Dominum を
   がんばりすぎた。バランス的にテノールの音量が大き過ぎる。
  ・後列でも音は聞こえた。
  ・休符の取り方が次につながらない。音楽が流れない。
  ・「風」は横に流れる感じがほしい。
  ・最後は支えがなくなっていたので、体力の配分が必要。
  ・フォルテの鳴らし方が上手く行っていない。フォルテで音色を合わせるような
   練習が必要。
  ・「Hodie」の15小節目、「ho-di-e」の音色が少し
   怖かった。楽譜には「やわらかく」という指揮者の指示がメモッてある。


Bass:
  ・まずは、ぐだぐだにならなくてよかった。
  ・タイミングが合ってない。(入るタイミング・切るタイミング)
   →なんとなく、ばらけて聞こえてしまう原因の一つか。
  ・声がばらけている。(声量的に、Fさん中心でそれに合わせて、ベースとし
  てまとめていくのが今までのベースのスタイルだが、今回は出来ていない。録音
  を聞いた感じだと、Fさんの声に、ノイズがかぶさっているように聞こえてし
  まう。各個人がもう少し出しつつ、揃うように練習が必要。)

 ベースからはその他、各人の反省を出していただいた。
 団長のサイトに掲載されているため(&個人名が出ているため)こちらでは割愛する。

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