2008年神奈川県大会講評、感想
審査員講評:
1)江上孝則氏
  課題曲:Sop メロディのラインがボケてしまわないように響きを集めましょう!
       (声が散らないように)。
       横の流れを大切に。(4拍子のビート感がはっきりしすぎています)。

  自由曲:
   Ubi caritas) Basがもっと出た方が良い箇所があります。
            D−T(ドミナント→トニック)の進行など。

   Tu es Petrus) meam(最後) Sop声集めて!(散らないように)。

   Tantum ergo) Altの音色がもう少し豊かだと響き方が変わってくると思います。
             メロディ(四分音符)がもっとlegatoでは?!

2)洲脇光一氏
  大変良くBlendした美しい響きが出ておりました。
  男女バランスが難しい所ですが、良く取れていると思いますが、並び方を工夫される
  のも良いかと思います。
  女声を前中央にすれば、声が前に出るのではないでしょうか。
  職場での合唱活動は大変と思いますが、ガンバッて下さい。
  ありがとうございました。

3)樋本英一氏
  課) ラテン語がもっている抑揚を息づかいにして歌いたい。
     例えば「Cibavit」「チバヴィトゥ」ではなく「チ===バヴィトゥ」であり
     (註:===は長い曲線)、「eos」は「エオス」ではなく「エ===オス」です。
     息の線が、===のような放物線を描くとラテン語の発音になり、その意味も
     伝わり、声、ハーモニーも豊かになります。

  自) グレゴリオ聖歌は上記の要素(息の抑揚)だけでできている曲です。
     デュルフレはそれを用いて作曲していますから、その息の線を出すことが
     この作品を演奏する本質です。
     「Tuta pulchra(註:Tu es Petrusの誤り)」のように速いテンポ細かい音符の場合も
     それはなくてはなりません。当然体に、発声にエネルギーが必要になって
     きます。
     そのエネルギー イコール 信仰から受ける感動であり、神を賛美する力に
     他ならないのです。

4)藤井宏樹氏
  G1 無理なくバランスのよい響でした。各パートの響がもっと合ってくるといい
     ですね。
     ポリフォニーとしての表現がさらに素晴らしくなると思います。
     様々なフレーズの持つ性格をもう少し理解していってください。

  自  響の質、和声のバランスなど良いと思います。
     この作品の性格を考えると、メロディーの存在をもう少し生かして
     音楽全体をとらえると良いかもしれません。アルシス、テーシスなども
     より生き生きとさせて、作者の意を表現していってください。

  職場……頑張ってくださいね!
  エールを送ります。

5)古橋富士雄氏
  素敵なアンサンブルでした。欲を言うと、もう少し音楽のゆれがあっても良いかも!

  美しい中に起伏がほしい。楽譜を正しく演奏しているのは素晴らしいのですが、
  本番はもう一歩自由に……! 期待しています。


指揮者感想:

今年は県立音楽堂改装などの日程上の都合もあって、例年よりコンクール日程が前倒し
になりました。毎年関東支部では最終日程あたりになる神奈川県大会が、今年は2週間
ほど早く行われ、お盆をはさんですぐという日程でもあり、練習に参加するみなさんも大変
だったのではないかと思います。

今回は、事前にミューザ川崎市民合唱祭2008で自由曲を三曲とも演奏しており、
その時の演奏でいろいろ反省した点を少しは活かせたのではないかと思います。
まだまだ準備不足の点は多々ありますが、今年もシード団体として関東大会へ推薦して
いただきましたので、これから一ヶ月半、がんばっていきましょう。

では、演奏の反省です。

課題曲:
全曲の中では、この曲が一番できがよかった。
テンポ感、ブロック毎の曲想など表現しようという意欲が感じられる。
ただ、全般的に言えることであるが、
 ・教科書的な、音符の形がくっきり見えてしまうフレーズが散見される
 ・ラテン語のディクションをもっと考えて演奏したい(できてる部分もたくさんあり)
 ・ブロック毎に、どこをどれだけ表現するべきか、目的意識がやや希薄に聞こえる
というところが気になった。

Aブロック:でだしの「Ci」は良かったが、その後が盛り上がりにかけた。
  「主は良い麦で養ってくださる、アレルヤ」
  「岩からあふれる蜜を飽くほど与えて下さる、アレルヤ」
  と歌いたいところ、前段の言葉と「アレルヤ」が全然関係ないものに聞こえる。
  もっと、「アレルヤ」に向かって音楽を進めていきたい。

Bブロック:「Iubilate Deo」の部分をもっと活き活きと歌いたい。
  パートによってばらつきがありすぎる。

Cブロック:「Gloria Patri」の重厚さと、「Sicut〜」の密やかさ、そこからの盛り上がりという
  点を表現している人と、単に音符を追っている人がいる。
  内声部の音程のからみがきっちりはまっていない。

また、曲を通して、
  音程的にはTenが母音「エ」などで下がり気味、Sopが場所によっては上ずる。
  Bass、Altoの、八分音符の動きが重すぎる。
  フレーズの終わりや語尾が淡泊すぎる
などの傾向がみられる。


自由曲
Ubi caritas:
自由曲三曲の中では、曲の作りについては一番表現できていたと思う。
ただし、最初のブロックと、最後(Tempo I以降)の音程は最重要課題。
事前にOrganの音と一緒に歌った時はいい音が鳴っていたので、その感覚を身体に
叩きこむような練習をしていきたい。
A-IとA-IIで歌い方、音程感などが違いすぎる。A-Iは全体的に慌てている感じ。A-IIは
テンポ感はいいが音程的に重い。男声が、主旋律とずれている箇所が数か所あった。

第二ブロック:力強さは出ていた。収める部分が収まらない(音量、音程ともに)。
最後の「sincero」に向かってもっと収斂したい。

最終ブロック:音程の問題が非常に大きかった。A-I、A-II全体で動くところが乱暴。
  「Amen」という言葉になっていない。もっとレガートに。

Tu es Petrus:
ミューザの時と比べて格段によくなった。
ただし、まだ歌いこなれていないというか、あわてすぎ。フレーズのつながりがない感じ。
「Petrus」、「Petram」で、言葉を揃える。
SopはP-10に入ってからもっと楽に歌いたい。今の半分くらいの力でいい。
下三声だけでの練習をもっとしたいところ。

Tantum ergo:
ただ楽譜をなぞりました、という演奏に終始してしまった。
各パート、独立してフレーズを動かせていない。また逆に連携すべきところもいま一つ
見えていない感じ。
四分音符、八分音符がガクガクしすぎているので、もっとレガートに。
言葉のアクセントの部分の重みを活かして音楽を動かしていきたい。
音程的には、全体的に暗めになっている。c-mollではなく、神秘と奇跡の第V旋法で
あるという意識をもって演奏したい。


団員感想:
8月27日(水)の練習で演奏CDを試聴し、パート内で話し合ってもらいました。
その抜粋を以下に掲載します。 (似通った意見を統合したりしています)
パートごとの反省全文は、パートマネジャから回送されているので読んでおいてください。

全般:
 ・思っていたより声が溶けていてよかった。
 ・まだまだなところはあるものの、ミューザの演奏と比べると格段に良くなっている。
 歌いこんできている成果か。
という肯定的な意見もあったが、
 ・出だしの部分がよくない(曲の開始、長い休符の後など)。
 ・長い音符、フレーズに問題がある。語尾がちゃんと聞こえない。
 ・たんたんと歌いすぎ
などの反省も幾つか出された。


課題曲:
 ・前半部分はうまく乗れなかった、あまりよくなかったという意見が幾つかあった。
  ⇒Versusから持ち直した、「Gloria Patri」から持ち直したという意見もあったが、
   逆に「Gloria Patri」の歌いだしが雑でダメだったという意見もあった。
 ・レガートは意識したが、メリハリ、元気のない演奏になってしまった。

 ・ラテン語の問題:
   カタカナ歌いになってしまった。
   子音の雰囲気などが同じようになるとよい。
   強調すべきところを強調したつもりだが他の抑揚がなかったので、却って目立って
   しまったところがあった。
   語尾をおさめようとしたのは良かったが、フレーズが尻つぼみになった。
   「Amen」の「n」が聞こえない。
   もっと母音でのびのび歌えるといい。


Ubi caritas:
前半部分:
 ・最初の和音が決まらない。バランスが悪いのかも知れない。
 ・女声IとIIの歌い方が合っていない。歌い方、音程、世界観をそろえたい。

音程の問題:
 ・最初のブロックで、音が上がりきらなかった(女声I)。
 ・低い音が支えがなくなり、低すぎてしまう(Ten)。
 ・最後の「Amen」をもっと抑えて安定させる(Bas)。
 ・協和音の中に不協和音が入ってくる、その対比を表現したい。

 ⇒最後のブロックの音程に危機感を持っている人が多かった。
  克服するための練習方法を再考したいと思う。

その他:
 ・縦の線がそろわなかった。
 ・音楽的な「ゆらぎ」のある演奏にしたい。
 ・単語を意識した歌い方をしたい(一部単語としておかしく聞こえたところがあった)。


Tu es Petrus:
 ・ノリは一番よかったが、乱暴だった。必死な感じで余裕がない。
 ・最後に向かっての盛り上がり:暴走しないで冷静に歌う。音程を正確に。

 ・各パートの音程がばらばら。
  ⇒パートごとに音程的に問題のある個所があったという反省が多かった。
 ・各パートで四分音符のリズムの感じ方が違う。
 ・アクセント箇所が唐突に強くなる(パルスっぽい)。


Tantum ergo:
 ・どこに向かっているのかわからなかった。
 ・音などの大きい崩れはないけれど、中学生が音楽の時間に
  歌っているような感じに聞こえた。
 ・切れ切れに聞こえる。もっとレガートに。
 ・レガートを感じるフレーズを二倍くらいにしないと曲想が出ない。

 ・パート間のつながりがない。
  各パートばらばらに動く曲ではあるが、縦の線をもっと意識するべき。

 ・音を伸ばしている間に下がる。
 ・レガートになっていない、言葉がカクカクに聞こえる。


Back