神奈川県大会感想

序:
今回の結果、銀賞でなおかつ県代表ということについて、いろいろと思うところはあると思います。しかし、ここ数回のコンクールは銅賞に甘んじていたことを考えれば、ひとつ賞があがったことは喜ぶべきことであるし、職場部門が一団体であったことを考慮に入れても、県代表として関東大会に送り出してもらえたことは素直に受け止めてよいと私は思っています。

もちろん、本来ならば金賞で代表となるべきであるのだから、その悔しさを忘れてはいけないですが、それは関東大会で雪辱するということへの原動力としたい。「一団体しかなかったからね」というような自虐的な態度や、冷笑するような意識を持つべきではないと思います。そういう発言もなるべく控えましょう。自戒を込めて。


演奏について:
自由曲二曲に比べて、課題曲の出来がよくなかった。これは全員がそう思っていると思います。
練習不足といえばそうかも知れませんが、少ない時間をやりくりしてこれだけの時間しか練習時間が取れなかったのであるから、それだけに原因を帰するべきではないでしょう。本来なら、5月から準備して間に合わない規模の曲ではありません。
最も問題なのは、団の中に課題曲に対する苦手意識が存在したことだと考えています。

現代曲を主に演奏している人にとっては短調にしか聞こえないこの曲、しかも譜面上はd-mollに見えるのに実際にはほとんどg-mollで推移する旋律線(本当のことを言えばg-mollでもない)や、どこといって盛り上がるところがない(ように見える)曲の構成に、とっつきにくさを感じているのではないか。
その結果、どこが特徴なのか、何を言いたいのか分からない演奏になってしまい、拠って立つべきところが不明瞭なため、音程や音量なども不安定になってしまったのだろうと思われます。

自由曲二曲については、「これを表現しよう」という意識がかなり芽生えてきていると感じられました。実際ステージでも、課題曲演奏時の不安を払拭し、持ち直してきたな、という感じがあった。表現できた部分とできなかった部分があるにはありますが、課題曲4分間より、はるかに活き活きとした演奏であったことは間違いありません。おそらく、銀賞はこの自由曲で聞かせた部分に対して与えられたのではないかと思っています。


各パートについて:
ソプラノ:4人で音程が合わない部分が高音で散見された。少し頑張りすぎてブレスが
     足りなくなったり、声が震える人が出る。音程が少し暗かった。
     響きが少々幼いのは(喉声でなっているのではないので)現状はそれでいい。
     ただし、AとEの響きはもう少し統一したい。
アルト:練習不足が如実に出ている。できているところと、分かっていないところが
    丸分かりになってしまっている。
    八分音符の動き、うねりがぎこちない。納めるべき時に大きすぎる。
    ただし音質はアルトとしてまとまっている。
テノール:人数が多く出席率も高率であったためか、パートとしてはかなり安定している。
     ただし、合唱祭から指摘されているが母音の開き方にばらつきがある。
     特にAとEが浅い。一部音程が悪い人がいる。
ベース:これまでになく大人しい演奏、しかし全体とのバランスをとろうと試行錯誤した
    結果であると思われる。ただやはり、消極的になりすぎたきらいがある。
    もう少し、大地となるべき音を大胆に支えて欲しい。

ソプラノに厳し目ですが、もともとソプラノは他のパートより目出つし音が高いのでほんのちょっとしたズレでも(他パートなら見逃されるくらいでも)指摘されがちなので、耐えてください。実際はそんなに悪くありません。
ただ、ソプラノに明らかにでかい柱がないので(ない方がいいという考えもありますが)声が散った時に再集合しづらいという面があるのではないかと感じています。


今後の目標:
これから関東大会までに、
課題曲については、苦手意識の払拭、もっと曲に慣れることを中心に練習をしていきたいと思っています。先週実施しましたが、「突然カルテット」ももう少し推進していきます。
その際、失敗しても絶対に曲を止めないこと、どこかから持ち直すことを考えてください。

また、自由曲については、曲想をもう少し劇的につけていきたいと考えています。

この時代の曲の特徴である「大きな二拍子のうねり」を付けること、また、「最初と最後を決める」ことについてはしつこいくらいやっていきたい。

曲の最初と最後を決めることは、
大きく言えば、課題曲の出だしと、終曲(Ave regina caelorum)の最後のカデンツを決めることです。まずこれがきちんと出来ていないと、審査員に感銘を与えられません。相手も人間ですしライブで聞いているのですから。
そして、同じことを一曲単位で見るなら、その曲の出だしのフレーズと最後のカデンツは必ず決める決め所です。そして、中世の曲はみんなそうですが、そのことは、各フレーズの出を揃え、終わりをきちんと納めることから実現されていきます。

またこれは発声の問題にも通じますが、フレーズをその瞬間からきれいに立ち上がらせるためには、いつも(発声練習の時から)求められた音をすぐにいい声で出す習慣を付けるということが必要です。出し始めてから確認するのでは遅すぎます。

ということで、発声練習からポリフォニーの練習だと思って、求められた音を的確にすぐ出す練習、長いスケールをレガートで練習しそれを曲のフレーズに見立てて「歌う」練習などを考えていきましょう。

最後に練習中に何度も言いましたが、各曲のイメージをもう一度書いておきます。

課題曲 Sancta Maria
 敬虔に、抑制をもって。しかし決して暗く悲壮にならず歌う。
 Sancta、Succure、Sentiantといった言葉を特に大切に。
 これらの言葉の掛け合いを意識する。

O quam gloriosum
 明快に、溌剌と。金管のように高らかにうたう中に、時折多少のうねりが見られる。
 この曲のテーマは、「終わりなき王国の栄光を讃える」ことにあります。
 曲の終わりがしょぼくならないように。出だしと最後の五度を大切に。

Ave regina caelorum
 やわらかに明るく。とにかくよくうねる。動く。次々と波が来るように。
 全体を貫いているのは聖母の救いを確信しているという意識。
 希望に満ち溢れた明るさをもって。


細かい点は練習しながら直していきましょう。練習の日々が続きますが、今度こそ、ステージ上でガッツポーズが出るような会心の演奏を目指して頑張りましょう。

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